プロの八百屋が教える「メロン」の話 ── 見極め方から、あの網目の秘密まで

八百屋の話

スーパーの売り場に並んでいても、なんとなく声をかけにくい。手に取るのにちょっと気合いがいる。値段もそれなりだし、「食べごろを外したら嫌だな」という緊張感もある。
そのくせ、食べてみると「なんでもっと買わなかったんだろう」と思う。
今回は青果部門で毎日メロンを触っている私が、品種の選び方から食べごろの見極め方、栄養の話まで、知っていると売り場で堂々と選べるようになる知識をまとめてみた。

メロンというフルーツには、不思議な”格”がある。

まず知っておきたい「メロンの分け方」

メロンを理解するうえで、大きく2つの軸を押さえておくと便利だ。
①果皮の見た目:ネット系とノーネット系
あの独特の網目模様、あれは「ネット」と呼ばれている。成長過程で果肉が果皮よりも膨らもうとするとき、果皮にひび割れが入る。そのひびを埋めようとしてコルク層ができ、網目になる。

つまりあの網目は、メロンが必死に大きくなろうとした証だ。ひびが入るほど充実して育った証でもある。
ネット系のメロンは、網目が均一に細かく入っているものほど甘みや香りが強い傾向がある。 対してノーネット系は表面がつるっとしており、価格も比較的手頃なものが多い。
②果肉の色:赤肉・青肉・白肉
果肉が緑色の「青肉系」にはアンデスメロンやマスクメロン、果肉がオレンジ色の「赤肉系」には夕張メロンやクインシーメロンが含まれる。 白肉系のホームランメロンなども存在するが、市場ではあまり見かけない。
この2軸の組み合わせで品種を整理すると、売り場に立ったときに頭が整理される。

代表的な品種と旬

メロンの旬は4月ごろに熊本県産の春メロンからスタートし、5月ごろから関東、7月ごろには東北や北海道というように、産地を北上しながら時期がずれていく。
一年を通じてスーパーで見かけるが、6〜7月が全体的なピークだ。この時期は入荷量も多く、状態のいいものが揃いやすい。
■ アンデスメロン(青肉・ネット系)
熊本県生まれの品種で、旬は5〜6月。現在は全国で栽培されており、バランスの取れた甘さとみずみずしい食感が人気だ。 スーパーで一番よく見かける品種がこれだ。値段も比較的リーズナブルで、初めてメロンを選ぶ人にもおすすめしやすい。
■ クインシーメロン(赤肉・ネット系)
果肉は厚くきめ細やかで、サーモンピンクからオレンジ色の美しい色をしている。糖度は15〜17度と高く、果汁も豊富でジューシーな味わいが特徴。旬のピークは6月ごろだ。 値段と甘さのバランスがとれた品種で、私が青果担当として一番売りやすいと感じる一品でもある。
■ マスクメロン(青肉・ネット系)
旬の時期は5〜7月ごろで、主な産地は静岡県や高知県。「マスク」とは麝香(じゃこう)に似た芳醇な香りに由来する。1本のツルから1個しか収穫できないことや病害虫に弱く管理が難しいため、高価格になる。 贈り物としての需要が強く、温室栽培のため年間を通して流通している。
■ 夕張メロン(赤肉・ネット系)
北海道夕張市の特産品で、品種名は「夕張キング」。「アールスフェボリット」と「スパイシーカンタロープ」という品種を交配して誕生した。果皮は熟するにつれて黄色みを帯び、完熟するころにはとろけるような食感になる。出荷は5月下旬〜8月中旬で、旬のピークは6〜7月ごろだ。
 

私個人の意見としては、5月ごろに最盛期を迎えるホームランメロンが一番コスパがよく美味しいのでおすすめです。市場の人たちとも話してるんですけど、これが1番美味しいのに売れないんだよなーって嘆いてますw

続いてプロが売り場で教える「いいメロンの見極め方」



メロンを手に取るとき、何を見ればいいか。青果担当として毎日触っている経験から、ポイントを整理してみる。
【ネット系メロンの場合】
まず全体を見て、網目が均一に細かく入っているかを確認する。網目の盛り上がりが高いものは充実感の証。次に、色ムラなく均一に色づいているか。左右対称に近いものは栽培管理がしっかりされていた証拠になる。
手に持ったときの重みも大事だ。ずっしりと感じるものは果肉が詰まっている。軽すぎるものは中身が締まっていない場合がある。
食べごろを見極めるポイントは「お尻の弾力」と「香り」だ。
メロンは常温で追熟させると、ヘタの周囲から香りが立ってきて甘さとうまみが高まる。食べごろの目安は、お尻の部分を軽く押してほんの少し弾力を感じる程度。
ただし、売り場でお尻を強く押すのはNGだ。傷みの原因になるし、そもそもマナーとして問題がある。自分で購入して持ち帰ったあとに確認するか、不安なら店員に聞いてほしい。

追熟の仕方と保存のコツ



スーパーで売られているメロンの多くは、購入後に数日置いて追熟してから食べるのが正解だ。
メロンの食べごろは収穫されてから3〜7日ほどで、個体差がある。追熟させることで糖度に大きな変化はないが、香りがより高くなりメロン特有の芳醇な香りを楽しめるようになる。ただしあまり長く置きすぎると果実が発酵しはじめるため、食べごろになったら早めに食べるべきだ。
追熟は常温・直射日光を避けた場所で。 冷蔵庫に入れてしまうと追熟が止まるので、食べごろになるまでは常温保存が基本。
カットしたあとは冷蔵庫に入れ、できるだけ早めに食べ切るようにしよう。

メロンに含まれる栄養の話


「あんなに甘いのに栄養があるの?」と思われるかもしれないが、メロンは意外と優秀なフルーツだ。
カリウムは利尿作用を促進し、高血圧の原因にもなる余分なナトリウムの排出を助けてくれる。夏場はカリウムが不足しがちで、メロンで補うことは熱中症予防にもつながる。
メロンには100gあたり340mgほどのカリウムが含まれており、毎日のミネラル補給としても効果的だ。 食事の塩分が気になる人には特におすすめしやすい。
そして赤肉メロンを選ぶメリットがここにある。
βカロテンは赤肉系のメロンに特に多く含まれており、体内でビタミンAに変換される。皮膚や粘膜の新陳代謝を高め、免疫機能を正常に調整し、視力の維持もサポートすると言われている。
赤肉系のメロンは、緑肉系に比べてβカロテンが約25倍も多く含まれている。 美容や抗酸化を気にするなら、夕張メロンやクインシーメロンがおすすめだ。
カロリーについては、100gあたり約42kcalと、フルーツの中でも低カロリーな部類に入る。 あの濃厚な甘さからすると、意外と罪悪感が少ない果物でもある。
ただし、赤肉メロンはあまり日にちを置くと、えぐみが出て食えたもんじゃない。

最後に

青果の仕事をしていると、季節ごとに「この時期はこれが来るな」という気配みたいなものがある。
初夏になってメロンが入荷し始めると、売り場の空気が少し変わる気がする。値段のわりに手が伸びにくいけれど、知識があれば話は別だ。
「網目が均一で、重さがあって、お尻に少し弾力がある」――これだけ知っているだけで、メロンの見え方がずいぶん変わってくるはずだ。
せっかく旬の時期がある果物なのだから、今年の初夏は一玉、ちゃんと追熟させてから食べてみてほしい。あの瞬間の香りと甘さは、「良かった、買って」と思わせてくれる。

書いた人:かもめの(スーパー青果部門歴20年。産地・品種の知識と、売り場でのリアルな経験をもとに記事を書いています)

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